がんになった時、今までの生活が一変してしまうことはよくあります。できたことができなくなることも多く、いろいろな制限が枷となって自分らしい生活が送れなくなってしまう人も少なくありません。
このページでは、がんになっても今までの生活を続けられるようにするための情報をまとめています。療養生活についての知識を持つことで、いきいきとした自分らしい人生を歩むことができるはずです。
がん患者だけでなく、がん患者を支えている家族の方にも知っておいてもらいたい、役に立つ知識を掲載します。
Ans.規則正しい生活、栄養のあるバランスの取れた食事、適切な強度の運動、日常的な感染予防、適度なストレス発散が適切な療養生活の基本と言われています。これに加え、周囲のサポートを最大限受けられる環境を整えることも大事です。
まずはなんといっても規則正しい生活リズムをキープすることが大切です。
人間の身体は24時間を1周期としたリズムを持っています。朝の起床時に血の巡りを良くし、体温を上げ、活動に備えているのです。
夜には心拍数を下げ、疲れが取れるような準備を始めます。
こういった一連の流れは人間が疲れを取りやすく、回復力を保つためにプログラムされているものですが、この流れが毎日違ったらどうでしょう。毎朝起きるはずの時間に起きていなければ、体は体温の調整や血流をあげるタイミングを失い、体の準備ができていないまま活動を始めることになります。それでは体に余計な負担をかけてしまうでしょう。
夜寝る時間をずらしてしまうと、脳は寝るモードに入っているのに体は起き続け、副交感神経の乱れにもつながります。体の本来持っている回復力を損ない、体調を崩す原因に。規則正しい生活を送ることで、体に対する負担が軽減され、体調も整いやすくなるうえ、怪我や病気からの回復力を上げることにつながるのです。
次に、栄養のあるバランスのとれた食事が大切です。
人間の1日の生活に必要な量のタンパク質やビタミン、ミネラルの入った食事を摂ると良いでしょう。
なるべく栄養不足や過多のない食事が好ましいのですが、毎回食事を完食するのはなかなか難しいでしょう。というのも、がんやその他の病気にかかった際は、体力的にも精神的にも今までどおりの食事量を摂るのが難しくなるからです。
人間の消費カロリーの多くは、食べたものの消化に使われています。裏を返せば、食事はエネルギーの補給であると同時に、エネルギーを使う、疲れる行為でもあると言えます。
「食事を取るのが難しい」「食べたくない」という時は、自分の食べられるものから、食べられる量だけ食べるのが良いでしょう。
すべてを食べなくてはいけないという気持ち自体が精神的にも負担をかけてしまうので、自分の食べられる量を食べ、体力が回復して食べられるようになってきたら食べる量を少しずつ増やしていけば良いのです。
また、タンパク質やミネラルなどのバランスを整えた食事であれば、内容を変えるのも1つの手です。
例えば、体重減少が気になるようであれば少し脂質の多い料理を摂っても良いでしょう。もちろん、食欲があまりないときは消化の良い料理を選んでください。体調に合わせて適切な食事を摂りましょう。
塩分過多になるような推奨されない食事もあるので、医師に相談のうえ、食べられる食事メニューを考えてください。
適切な強度の運動をすることもがんの療養生活においては重要な要素の1つです。
医師から運動の許可が出たら少しずつ体を動かしましょう。
ここで重要なのは、段階を経て徐々に体を動かすことです。ずっとベッドの上にいたのにいきなり走り出しては体もびっくりして、疲れてしまいます。
まずは、家の中で日常生活の動作を繰り返し行いましょう。
ベッドから起き上がる、階段を登り降りする、歯を磨く、靴を履く、ストレッチをするといった小さな動きをして体を慣らしていきます。
家の中での動作に慣れたら、次は外に出てみましょう。近場の公園への散歩といった、比較的体の負荷が少ない運動を徐々に行うのが理想です。外出の際は家族やヘルパーの付き添いがあると安心でしょう。
近場への外出に慣れたら徐々に距離を伸ばしてみましょう。徐々に自身の運動能力を取り戻し、自信と体力をつけていきます。
ただし、焦って無茶をしてはいけません。自分の体力と相談しながら、無理のない範囲で運動を行いましょう。
また、がんの種類や手術の種類によっては推奨されない運動や、逆に鍛えるべき筋肉などがあります。医師の指導のもと、節度を保った運動を適度に行いましょう。
日常的な感染症予防も、がんの療養生活には欠かせないポイントです。
がんに限らず、病気にかかった後は免疫が弱り、菌やウイルスに侵されやすくなっているため、他の病気にかかる可能性が通常時より高まります。
室内を綺麗に保つだけでなく、外出した場合は帰宅時に手洗いやうがいを徹底しましょう。食事前の手洗いも欠かせません。
また、外出時には人混みを避け、マスクを着用するのが良いでしょう。インフルエンザといった感染症が流行している時期は、必要以上に病院へ行くのも避けたほうが良いでしょう。常日頃から感染症予防を心がけて健康を維持することが大切です。
適度にストレスを発散するのも療養生活に良いと言われています。
とくに大きな手術の後はなかなか病室から出られず、ストレスが溜まってしまうものです。そんな時は自分の心境を話せる人を見つけ、素直に自分の気持ちを打ち明けましょう。家族でも、医師やカウンセラーでも構いません。ストレスの溜まらない生活を目指しましょう。
がん患者のためのコミュニティも数多く存在します。足を運べる範囲になくてもwebサイトやメールなどで近況を話し合える場や、患者向けの交流会を企画している医療機関も。
自分にあったコミュニケーションの場所を見つけ、1人で不安を抱え込まないようにしてください。
自宅での療養生活の場合は、適度な運動もストレス発散に効果的です。長い間運動をせず家にこもっていると気が滅入ってしまい、身体を動かすことができなくなるがんロコモやサルコペニアという状態にかかってしまうことがあります。はじめは簡単なものでも良いので、定期的な運動を心がけましょう。
Ans.がんロコモとは、ロコモティブシンドロームと呼ばれる状態の略称です。骨、関節、筋肉などの運動に関わる器官に障害が起こり、立つ、歩くなどの行為が出来なくなった状態を指します。
例えば、加齢やケガにより、関節や骨に骨折などの障害が起きたとします。骨折が治ったとしても、歩行に痛みを伴うため外出が億劫になり、徐々に筋力が低下していき、最終的には自力で歩行できなくなってしまう状態になることが。これをロコモティブシンドロームと呼びます。
がんロコモとはがんによって外出や運動が億劫になり、避けているうちに外出や運動が自力でできなくなってしまう状態です。
がんロコモの対策としては、適度な運動と栄養のある食事が挙げられます。治療のために安静状態を取らざるを得ず、一時的に運動ができないのであれば、回復するのも比較的早いでしょう。医師の適切な指導のもと、リハビリを行うことで治療前の筋肉を取り戻す計画が必要です。
また、運動機能の障害が理由で通院治療を受けることができない方の場合、訪問診療に対応したクリニックへの相談も検討しましょう。下記サイトでは、訪問診療に関するさまざまな情報が紹介されているので、気になる方はぜひチェックしてください。
【東京】医療従事者のための訪問診療検索サイト -ほっとドクターin東京-(外部サイト)Ans.サルコペニアとは、加齢や疾患が原因で筋力が減少していく状態を指します。
ロコモティブシンドロームとの違いは、ロコモティブシンドロームに挙げられる運動器官の障害のうち、筋肉量の低下についての障害のみである点です。がん患者の約8割がサルコペニアにかかっていると言われており、患者のあるべき生活が失われている現状にさまざまな対策が打たれています。
がんの場合のサルコペニアは高齢者でなくともかかる恐れがあります。これは、がん細胞が生み出すサイトカイニンが血液を巡って炎症を起こし、筋肉が分解されやすくなると考えられているためです。
とくに胃がんや腸がんなどの消化器系のがんに多く、進行がんで起こりやすいと言われています。また、サルコペニアの患者は筋肉量が少ないため、通常食事などで摂取した栄養をグリコーゲンにして筋肉に蓄えることができず、血液中に放出されるため血糖値のコントロールが難しくなります。そうすると、糖尿病にかかる可能性が高くなるのが懸念されます。
ただし、適切な食事による栄養管理や化学療法によって、サルコペニアは治療できる可能性があります。医師の指導のもと、適切な運動を心がけてサルコペニアにならないように努めましょう。
Ans.不規則な生活リズムを避け、十分な睡眠時間を摂るのが良いでしょう。また、難しければ昼寝などで心身の疲れを取るのも効果的です。
がん患者の体は以前よりも体力が落ちているため、疲れやすくなっています。それまでの生活リズムに固執するのではなく、療養のための適切な生活リズムを見つけてください。
生活リズムが整ったら、睡眠の質が適切かどうかをチェックします。人によって適切な睡眠時間はそれぞれ。自分が「よく眠れた」「疲れがとれた」と感じられるように良質な睡眠を摂ることが重要です。
しかし、1回の睡眠では十分に疲れがとれないこともあるでしょう。その場合は、昼寝などを使ってこまめに休憩を入れ、疲れをとってください。軽い運動は積極的休養とも呼ばれ、凝った筋肉をほぐしたり、疲れを解消する効果があります。
何をやっても眠れない場合は無理に眠るのではなく、軽くストレッチをするのもオススメです。ほどよく体に疲労を感じさせると、自然に眠くなることもあります。無理のない範囲で運動を行ったら、きっちりと休養を取り、疲れを次の日に残さないようにしましょう。
Ans.地域包括支援センター、がん支援センターなどは誰でも受けられるサポートを提供しています。
療養生活を送るためには周囲の支援が不可欠です。日本では、地域に縛られることなくレベルの高いがん治療が受けられるように、全国各地にがん診療連携拠点病院を設置しています。
がんの治療体制やリハビリ、療養生活を送るうえでの支援を行っているため、お住いの地域の病院を通して、地域で受けられるケアについての情報を集めてみてください。
がん患者の療養生活は、再発のことも考えると長丁場になることも少なくはありません。今までとまったく同じ生活とはいかないまでも、できるだけ自分らしい元の生活を取り戻せるように、受けられるサポートをチェックしてみましょう。
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