がんに対する第四の治療法として注目されている免疫療法。手術療法や強い放射線治療・化学療法などに比べて、身体への負担が少ないのが特徴です。
転移がんや進行したがんにも効果を発揮すると言われ、様々な種類が開発されている免疫療法について解説してみたいと思います。
がんの治療法と言うと、腫瘍を外科的に切除するか、または薬剤や放射線によって外部から攻撃してがん細胞を減らすかといった方法に終始しがち。このように体の外から腫瘍にアプローチすると、やはり外科的な傷や薬剤の副作用などは必ず起こってしまいます。そんな問題を払拭しながら、がんを確実に減らすことができる新しいタイプの治療法が免疫療法です。
免疫療法の基本は、患者の体からの免疫細胞を取り出して活性化させることにあります。まずは、患者さんから採血し治療に使われる免疫細胞を選り分けて、専用の培養液で活性化させながら増殖させます。活性化した免疫細胞だけを集めて生理食塩水と共に体へ戻し、がん細胞を攻撃させるという方法です。
現在行われている免疫療法は、『樹状細胞ワクチン療法』、『NK細胞療法』、『ガンマ・デルタT細胞療法』、『アルファ・ベータT細胞療法』、『CTL療法』など。体内に存在しているどの種類の免疫細胞を活性化させるかという違いによって、数種類に分類されています。
抗がん剤は全ての細胞にはたらきかける薬なので、正常な細胞まで攻撃してしまいます。その結果、副作用が重く、患者の体にかかる負担が大きくなってしまうのです。一方で、免疫療法は自己の免疫細胞を使ってがん細胞のみを攻撃する治療法のため、比較的体への負担は少ないといえます。とはいえ、まったく副作用がないわけではなく、疲労や発熱などを引き起こす可能性が。副作用の度合いによっては、日常生活に影響が出ることもあります。
免疫療法は、医療者にとって画期的な治療法ではありますが、患者さんから見れば至ってシンプルな治療内容となっています。採血を行い2〜3週間後に点滴を受ける治療を数回繰り返すだけなので、患者さんの体への負担が少ないのが特徴です。
免疫療法薬は、副作用が出るケースがあることが報告されています。国立がん研究センターの情報によると、2017年における胃がんの患者330名のうち、副作用が出た患者は全体の42.7%にあたる141名でした。そのうち、31名の9.4%の患者が、疲労や疲労感を訴えています。続いて、そう痒症の副作用が出た患者は30名で、全体の9.1%を占めています。他にも、発疹や悪心、食欲減退の症状が出ています。
しかし、抗がん剤と比較すると、副作用が重症化する割合は低いといえます。国立がん研究センターの情報によると、2015年における肺がん患者のうち、免疫療法薬と抗がん剤を使った人では、副作用に違いが見られることが分かりました。
まず、免疫療法薬のニボルマブを使った287名のうち、重症化したのは30名で、10%が重症化する結果となりました。その一方で、抗がん剤であるドセタキセルを使った268名では、重症化したのが144名で、なんと重症化した患者の割合は54%を占めています。この結果からも分かるように、免疫療法は抗がん剤よりも重症化するケースが少ないといえます。
免疫療法薬の副作用は、発現時期が分かりにくいため、副作用の初期症状を見逃さないようにすることが大切です。治療後に副作用が現れるケースもあるので、異変を感じたらかかりつけ医に相談しましょう。重症化するリスクも0ではなく、副作用で死に至るケースもあります。副作用だから問題ないと自己判断はせず、何か気になることがあれば、医療機関やがん相談支援センターに相談しましょう。
免疫療法は、切開や副作用の面で従来の治療よりも負担が少ない画期的ながん治療法ですが、ひとつ問題として、大半の治療が自由診療で高額な治療費がかかってしまう点が挙げられていました。
今でも効果が証明されているものはほんの一部ですが、効果が認められるものは保険診療に変わっています。
たとえば、PD-1阻害薬であるニボルマブは、悪性黒色腫・非小細胞肺がん・腎細胞がん・ホジキンリンパ腫・頭頸部がん・胃がん・悪性胸膜中皮腫なら保険診療となります。このように、保険適応の免疫療法も増えているので、費用の面で不安があるなら事前に医師やがん相談支援センターに相談しておくと良いでしょう。
ただし未承認の免疫療法に関しては、従来通り自由診療となります。自由診療では保険が効かないので、すべての技術料、薬剤費、処置料などの医療費は自己負担。場合によっては数百万円単位の治療費を用意しなければならないケースもあります。
免疫療法は世界的に研究が進められている技術ですが、がんに対しての処置は三大療法を中心にエビデンスや臨床試験を積み重ねているものが多く、どのがんに対してどのワクチンを使えばよいのかについてまだ明らかになっていません。
また、臨床試験では「既存の療法と免疫療法を比べたときの差」を調べているものが多いです。「免疫チェックポイント阻害剤同士を比べた場合、どちらのほうが優れているのか」を比べる段階まで試験が進んでいないため、免疫チェックポイント阻害剤同士の優劣もわかりません。
さらに、特定のがんに対抗できるとされている免疫チェックポイント阻害剤であっても、すべての患者におすすめできるわけではないことがわかっています。ノーベル賞受賞者、本庶佑氏の研究から生まれた「オプジーボ」も、アメリカ臨床腫瘍学会で発表されたCheckMate017・CheckMate57という2つの試験では、客観的に使った意味があったのはそれぞれ被験者の20%と19.2%に過ぎませんでした。[注2]
この調査で対象になっているがんは、進行中の転移がんである「転移性肺扁平上皮がん」と「転移性非小細胞肺がん」の2種類。同じがんにかかっている患者でも、患者の条件や持病等によって免疫療法をしても意味がない場合があるのです。三大療法でもがんの根絶ができないのと同様、すべてのがんに意味のある夢のような免疫療法は発見されていません。
なお、オプジーボに関しては、膠原病・リウマチ・間質性肺炎の患者が使用した場合、重い副作用が出る可能性が高いというリスクも指摘されています。副作用の発現率に限れば、先ほど紹介したCheclMate017試験に参加した58%、CheckMate057の参加者中69%が、何らかの副作用を得ているなど、使用上のりリスクがあるのも事実です。[注2]
同じがん、同じ免疫療法であっても、患者の体重や健康状態によって利用できるものは変わってきます。それに、臨床試験の結果を1つピックアップして有用性を判定するわけにもいきません。実験ごとに免疫療法の投与量や被験者の数が違う以上、実験同士を単純比較することが難しいからです。
また、日夜新しい臨床試験の結果が更新されているため、現役の医師でもすべての論文や研究結果に目を通しているとは限りません。「以前の調査では意味がないとされていたが、一部有用だとわかった」「ほかの療法と組み合わせると有用だった」など、新しい実験結果によってそれまで定説とされていた有用性についての考え方がひっくり返ってしまった例もあります。
単純に「このがんにはこの免疫療法」と考えるのが難しいため、免疫療法に興味がある場合は、がんの種類や免疫チェックポイント阻害剤の種類ごとに有用性を判断できる医師を見つけて相談しましょう。
肺がんは、数あるがんのなかで最も免疫チェックポイント阻害剤の臨床試験が多いがんです。とくに、肺がんが進行してしまい、一般的にはもう手術や放射線療法での対応ができなくなったステージⅣの臨床試験が非常に多く、有用性も複数の実験で確認されています。
ただ、遺伝子型やどの療法を組み合わせるかによってそれぞれ試験結果が異なるため、注意が必要です。診療ガイドラインに記載されている商品でも、がんの種類によっては保険の適用にならない場合があります。
肺がんに比べると数はぐっと少なくなりますが、胃がん患者に対する免疫療法の臨床試験も進行中です。ただし、多くの臨床試験は3段階ある治験のフェーズ3まで進んでいません。残念ながら、治験の結果が出揃うまでは胃がんの転移時に免疫療法を選んだほうがよいのかを検討することはできないでしょう。
ただし、オプジーボに関しては治験の最終段階まで臨床試験が進んでおり、標準治療としてステージⅣの胃がんに利用できるようになっています。
乳がんに対する免疫療法のなかで、注目を集めているのがテセントリクという免疫チェックポイント阻害剤です。テセントリクは2018年の1月に非小細胞肺がんの適用治療として認められていますが、乳がんに対する臨床試験も進められており、2018年の12月に乳がんの適用治療として申請も行われています。
通常の方法では対処するのが難しい「トリプルネガティブ乳がん」に対して有用だという結果が出ているため、将来性の高さが魅力です。
当初、大腸がんは免疫チェックポイント阻害剤を使っても意味がないとされていました。しかし、数は少ないものの臨床試験は進められており、特定の療法と組み合わせた場合意味があるのではないかという結果が出ています。
また、アメリカのFDAでは大腸がんに対する有用性で一部の免疫チェックポイント阻害剤が承認を受けており、今後研究が進めば日本で標準治療になる可能性も無視できません。
腎臓がんに関しては、アメリカのFDAで承認を受けているのが「オプジーボ」。臨床試験の数こそ少ないですが、一方で臨床試験ではすでに承認されている分子標的薬と比較して「有用性が見られた」という結果になっているため、期待度は高いです。
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