ブラジル原産のキノコ『アガリクス』。インカの時代には“神のキノコ”と呼ばれて珍重されてきたアガリクスの、特徴や効果、実際に引用した方の症例などをまとめて紹介しましょう。
日本ではヒメマツタケとも呼ばれるアガリクスは、ブラジルのピエダーテという地方が原産。キノコといえば多湿な日陰を好むものですが、このアガリクスだけは日光が直接当たる日向を好む性質があります。しかも、湿度が高くて昼と夜の寒暖差が15度以上ある、空気がきれいな環境でしか生育しないそうです。
太陽の光を浴びて育つ珍しいキノコは、インカの昔から食用にして親しまれており、原産地のピエダーテ地方では、成人病やがんにかかる人がとても少ないと言われていました。
アガリクスにはβグルカンやペクチドグルカンなどの多糖体類が多く含まれていて、中でもβグルカンは体内の免疫細胞のひとつ、ヘルパーT細胞を活性化させる働きが強いとされています。ヘルパーT細胞は、体内の免疫系へ攻撃の指令を出す司令塔の役割をはたしていますから、ヘルパーT細胞が活発に働くようになると、免疫機能がアップしてがん細胞への攻撃力も強化されるわけです。[注1]
さらに、アガリクスにふくまれるエルゴステロール誘導体という成分は、がん細胞の自滅(アポトーシス)を促す作用を持つことが分かっています。[注2]
アガリクスはこれまで抗がん効果や、免疫力を高める作用があるとして販売されていましたが、人に対する有効性を保証するものはありませんでした。
そこで、アガリクスを含む複数の製品についてラットを用いて動物実験を行った結果、1つの製品に発がんを促進する作用が認められたのです。これを受け厚生労働省では、人への健康被害を未然に防ぐため製品名を公表して注意喚起を行っています。発がん作用が認められた製品については各メーカーが自主回収をし、生産・販売を止めている状況です。
そのため、現在アガリクスを含む製品による明らかな健康被害の報告はありませんが、肝障害、肺炎など、あるいは諸症状の併発が疑われる事例が報告されており、健康に被害を及ぼす可能性を示唆しています。また、発がん作用が認められたアガリクス製品を使っていなかったとしても、安全性の保障が確立されるわけではありません。アガリクス製品を摂取する場合、各製品の製造元・販売元に問い合わせの上個人の責任の範囲で決定する必要があります。
現在、アガリクスを含むすべての商品について発がん作用を確認する試験を実施するかどうかについては各メーカーに一任している状態です。厚生労働省はアガリクスの安全性について、正しい情報を提供する立場をとり、今後詳しい成分調査を行う予定だと発表しています。
このように、アガリクスは安全性について今も調査が続けられている成分です。がんに有効らしいといわれていてもすぐに飛びつかず、よく検討してみるのがよいでしょう。自身の健康状態や生活習慣も考慮し、自分に合った成分を適切に選ぶことが大切です。[注3]
活性酸素の過剰分泌によって発生するがん。最近は、がんに有効な成分として、ワサビに含まれるワサビスルフィニルも注目を集めています。
ワサビは古来日本各地の山々で自生していたもので、馴染みの深い香辛料の一つ。食中毒を未然に予防する抗菌作用については広く知られていますが、発がん予防成分についてはあまり知られていません。
ワサビスルフィニル(正式名称:6-メチルスルフィニルヘキシルイソチイオシアネート)には活性酸素の分泌を穏やかにする抗酸化作用があり、がんが発生するリスクを減らします。また、発生してしまったがんに対してもワサビスルフィニルは有効にはたらきます。
がん細胞の増殖を抑制し、抗がん剤よりも優れた抗がん効果を発揮。また、発がん物質の無毒化・がん細胞の排除機能なども認められました。
植物を用いたがん療法でもこうした抗がん効果の事例がいくつか報告されていますが、ワサビスルフィニル独自の作用としてがん転移を防ぐ効能があることが分かっています。[注4]
>>注目の成分ワサビスルフィニルとは?ワサビががん治療にもたらす効果を詳しく見てみる
アガリスク由来のエルゴステロール誘導体に、人間の肺がんや舌がん、子宮頸がんに対して自滅させる効果が研究と実験によってわかっています。[注5]ただし、これは特定の工程を経てアガリスクから抽出されたエルゴステロール誘導体を含む脂溶性抽出物を使用した結果であり、アガリスクをそのまま、あるいは健康食品として加工されているものを使用したものではありません。
アガリスクをあくまで健康食品とした場合の評価は、厚生労働省の主導で2回行われています。[注6] [注7]1回目はラットを使った実験で発がん性がある可能性が出た製品を含む3製品の検証です。これにより、発がん性が疑われたアガリスク製品は厚生労働省が自主回収を促し、製造メーカーがそれに応じる形で回収されて以降は販売されていません。
2回目はラットを使った実験で発がん性が認められなかった2製品の再検証で、厚生労働大臣の要請により食品安全委員会新開発食品専門調査会という専門家が集まった外部の第三者による調査会が立ち上げられ、安全性の確認をする目的で評価が行われています。しかし、この評価は中途半端に終わってしまいました。
健康食品としてのアガリスクのがんの抑制効果おける有用性は、食品安全委員会新開発食品専門調査会の評価でもわかっていません。[注8]
さらに評価を進めるために食品安全委員会新開発食品専門調査会が新たなデータを厚生労働省に求めた所、データの元となるアガリスク製品の賞味期限が切れてしまったためにデータの提出ができず、アガリスクの安全性に対する評価を進めることができなくなりました。
以降、厚生労働省主導による人間に対する健康食品としてのアガリスクのがんへの有用性や、副作用を評価、検証することは行われていません。そのため、厚生労働省は健康食品として販売されているアガリスクのがんに対する効果の有無は、確認できていないとしています。[注9]
また、ラット実験によって発がん性がある可能性を示唆されたアガリスク製品についても、人間に影響する結果ではないとしています。健康食品のアガリスクが原因になっている可能性のある副作用がいくつか学術雑誌などに掲載されているものの、厚生労働省は人間に対してアガリスクが何らかの副作用を起こす事を否定も肯定もしていないので、人に対する健康食品としてのアガリスクは、がんへの効果や副作用について何もわかっていないままです。
正確に言えば、アガリスクががんへの効果や副作用など、人になんらかの影響を及ぼす可能性はあるが、データが足りずに検証が途中で打ち切られてそのまま放置されている状態です。
検証や評価では健康食品としてのアガリスクに転移抑制を含むがんへの有用性は確認されておらず、あくまで抽出工程で得たエルゴステロール誘導体を含む脂溶性抽出物にがんを自滅させる効果があることがわかっているのが今のアガリスクに対する評価です。特定非営利活動法人日本緩和医療学会の資料「がん補完代替医療 ガイドライン」によれば、健康食品としてのアガリスクにはβグルカンの免疫賦活作用が無いとする報告が多数を占めます。[注10]
食品としてのアガリスクにはがん転移を防ぐ効果は、実証されていない、またはデータが不足してわかっていない状態にあります。しかし、がん補完代替医療ガイドラインには、各所の医療機関からがん患者の生活の質が向上したという報告や、化学療法による副作用の軽減の可能性は報告があったことが記されています。
個人差はありますが、健康食品としてのアガリスクに化学療法の苦しみを和らげたり、生活の質を向上させる可能性がないとは言い切れません。食品としてのアガリスクにがんを抑制する効果を期待するのは現状だと難しいと言えますが、アガリスクをがん治療の医薬品原料として見る場合や、がん患者の生活向上や苦痛の緩和には、有用性を期待できる可能性があります。
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