がんの転移や再発を予防するためにできることは、些細な日常生活においてもたくさんあります。
食事の内容や食べ方、運動やリラックスできる趣味など、ほんのちょっと気を付けるだけでがんの転移を防ぐだけではなく、健康な身体や充実した日々が手に入ります。
転移予防の観点から、日常生活の過ごし方について考えてみましょう。免疫力向上に効果的とされる食品や、がん予防として話題の成分についても紹介します。
がんの原因には様々なものがあり、完璧な予防法はありません。しかし、よい食生活を送ることで、がんになりにくい生活を送ることは可能です。理想的な食事は、体の組織の消耗を防ぎ、細胞の再生を助けます。がん予防に役立つ食事のポイントは以下の6つです。
がん予防に役立つ食事のポイントは以下の6つです。
過食はたいへん危険です。動物性脂肪や塩分の多い食事、過度の飲食などは、がん予防だけでなく、糖尿病や高血圧などの生活習慣予防の観点から言っても、避けなければならない問題です。どうしても食事で栄養を摂れない場合には、健康食品を利用することもおすすめです。健康食品には、普段の食事では取りにくい栄養素を、効率よく摂取することができます。ただし、健康食品を摂取する前に以下の点に気を付けてください。健康食品を取るときは、自分に必要か、安全かなどを考慮したうえで使用しましょう。[注1]
デザイナー・フーズとは、1990年にアメリカの国立がん研究所が打ち出したものです。デザイナー・フーズに指定されている食品は、免疫力を高める食品なので、少量でも毎日摂取することが大切とされています。がんの発生は、食生活の及ぼす影響が大きいです。そこでアメリカ国立がん研究所は、どのような植物食品の成分を摂取すれば、がんの発生を未然に防ぐことができるかを調査。その結果、40種類の食品をがん予防に有効だと結論づけました。重要度が高いほど免疫力の向上が見込まれ、がん予防が期待されます。[注2]
重要度 | 食品 |
---|---|
高 | にんにく |
中 | キャベツ、天草、大豆、ショウガ、ニンジン、セロリ、パースニップ |
タマネギ、ウコン、お茶、ブロッコリー、カリフラワー、芽キャベツ、トマト、ナス、ピーマン、柑橘類果物(オレンジ、レモン、グレープフルーツ)、全粒小麦、亜麻、玄米 | |
低 | マスクメロン、ローズマリー、バジル、キュウリ、ハッカ、アサツキ、オレガノ、タラゴン、カラスムギ、タイム、セージ、大麦、ジャガイモ、ベリー |
一方で、がんを含めた生活習慣病の予防が期待できるファンクショナル・フーズにも注目が集まっています。ファンクショナル・フーズとは、植物の栄養成分を使った機能性食品のこと。名古屋大学の論文によると、機能性食品には活用方法次第で、個人にあった病気予防の可能性がある[注3]と述べています。
がんの再発・転移は、食生活で予防できることをお伝えしました。特に気を付けていただきたいのは、食品の栄養成分です。最近、がん予防ができる成分として注目を集めている成分があります。それは、6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート(6-MSITC)。わさびに含まれる成分なので、ワサビスルフィニルと呼ばれています。NHKテレビ番組「あさイチ」で取り上げられるほど、注目をあびている成分です。ワサビスルフィニルには、解毒酵素を誘導する力や、がん細胞の自滅を促す力、変異した細胞を排除する力があります。これにより、がん細胞の発生・増殖を抑制することができるのです。[注4]さらに、ワサビスルフィニルには免疫力を活性化する能力も。よって、がん細胞の転移予防にも効果が確認されています。
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栄養バランスの整った食事を意識し、高たんぱく・高カロリーの食材を摂取しましょう。とくにたんぱく質は筋肉の生成や強化のために重要な役割を担う栄養素なので、積極的に摂ることが大切。
メニューに揚げ物をいれたり、サラダにはノンオイルではないドレッシングを利用したりするだけでも、ある程度高カロリーな食事を摂れます。また飲み物をヨーグルトのドリンクや牛乳に変えるだけもたんぱく質を摂取可能です。
食事の際は、しっかりと咀嚼をしたうえで時間をかけて食べることが大切です。日本胃癌学会の発表する『胃がん治療ガイドラインの解説 胃がんの治療を理解しようとするすべての方のために』のなかでは、がん手術後の食事について以下のように触れています。
健康な人の食事方法と大差はないと言えるでしょう。ちなみに、甘いものを食べても問題はありません。「なにを食べても良い」「肝機能が健康であれば飲酒も可」ともしています。アルコールについても「げっぷを出せない場合はビールではなくワインや日本酒を摂取すれば良い」とも表記しているのです。
食事を摂る上で最も重要なことは、普段から好きなものや美味しものを楽しみながら食べることです。がん患者の食事は、生活習慣病の患者への栄養指導とは異なります。栄養バランスを考えつつも、好きな食事を摂りましょう。
食事は大切ですが放射線治療や抗がん剤治療の副作用が原因で食欲がないときは、無理に食べる必要はありません。しかし、何も食べないのはかえって体に負担をかける場合もあるので、ゼリーやおかゆなど喉に通りやすい物を食べると良いでしょう。
食事には人間の心を豊かにする力があります。美味しい物を食べることで活力が生まれ、前向きに考えることにつながります。食事や栄養を意識することは大切ですが神経質にならずに好きなものをバランスを考えて食べましょう。
症状によっても、食事のとり方は異なります。症状別のポイントを確認しておきましょう。
食べられるタイミングで、食べられるものを摂取することが大切です。少ない量でも十分なエネルギーを得られる、高カロリーな食品を活用したり、間食をしたりと工夫しましょう。エネルギーが高い油ものや、糖分を摂取しやすいジャムなどをパンに塗って食べるなどの工夫をすると良いでしょう。
抗がん剤治療などの薬物療法や放射線治療を行うと食欲が低下する人も少なくありません。治療による副作用の影響が出やすい時期を過ぎれば食欲が戻ってくるため、闘病中は体調に合わせて消化に良いものを食べましょう。
食欲が戻ってきたら食べる種類を増やしていきましょう。また盛り付けにもこだわれば、食事と見た目ともに満足感を得られます。味付けは多少濃くして、主食は酢飯にしたり、一口大にしたりすると食べやすくなります。
吐き気やおう吐感がある場合、匂いや味などがそれらを引き起こす原因となるケースもあるため、調理方法や盛り付け、食材を変えてみましょう。また、においや刺激が強いものは避けてください。
また、食欲がない場合には、胃腸を整える薬や吐き気止めなどを処方してもらうなど、医師へ相談することも大切です。少しは食べられるという場合は、あっさりとしたものや冷たいもの、飲み込みやすい食品を選びましょう。 例えば、水分が多い野みかん・スイカ・トマトなどの果物・野菜類を食べるのも有効です。アイスやゼリー、プリンなどのスイーツも良いでしょう。
食事を摂取できないときでも、水分だけは摂取するようにしてください。脱水症状を防ぐために、ミネラルを同時に摂取できる麦茶やスポーツリンクなどを飲み、食欲が戻るのを待ちましょう。
がん治療の影響によって、嗅覚や味覚に変化が現れるケースも珍しくありません。理由は味を認識する機能が低下することや感覚が変わることなどが挙げられます。
味覚が敏感になっていると、醤油や塩といった味がしょっぱいものでは苦いと感じたり金属のような味に感じてしまったりするケースも少なくありません。そのため、塩分を抑えたり調味料を使用して食べられる味に変化させたりと工夫が必要です。出汁に柚子や酢、ゴマなどで食材の風味を変えることで食べやすくなるでしょう。
塩味だけではなく甘味に対しても敏感になる傾向にあり、どのような食材でも甘いと感じてしまうことも珍しくありません。そのため、料理をする際にはみりんや砂糖を使用せず、しょうゆ、塩、みそとで風味を付ける、酢などで酸味を付けるなどの工夫をするとよいでしょう。
また、美味しいそうに感じられるように盛り付けの工夫も必要です。食器についても、見た目が美しいものを使用すれば気持ちも高まります。味覚に異常がある場合は、口腔内を清潔な状態に保ち、乾燥させないよう水分を摂取することも大切です。
食べにくさを感じる場合は、姿勢を見直してみましょう。例えば、 食事にむせてしまうのであれば、上半身を45~60度起こした状態で、あごを引いて食事をとります。ただし、飲み込みやすさなどは個人差があるため、自分にあった食べやすい体位を調べるなら担当医に相談してみるとよいでしょう。
がん患者の体重の減少には、病気そのものの影響や治療による影響があります。とくに骨格筋量が減少しやすい傾向にあるため、いかに骨格筋量を保つかが重要です。骨格筋には人間の体を動かすために必要な物質が多く出ており、そのなかにはがんの発育を抑制するものもあると言われています。治療中の人や転移を予防したい人は、栄養管理や理学療法を徹底してくれる病院を選ぶ必要があります。
1日の運動時間が少ない人は、がんにかかりやすいという研究結果があるそうです。血流を促進して新陳代謝を高めたり、気分をリフレッシュさせる効果もあるので、ウォーキングや軽いジョギングなど、無理のない程度に行うのがおすすめ。
「運動はどうも苦手で…」という人は、『ウォーキングに出かけなければ!』というだけでプレッシャーになってしまう可能性があるので、仕事や家事でできるだけ体を動かすように心がけるなど、ストレスにならない程度の軽い気持ちで運動しましょう。
食生活の改善と共に、最も重要だとされているのはストレス管理です。過労、心労、薬の長期服用などで心身に強いストレスがかかると、免疫力が激減。ストレスによって生じる自律神経の乱れは、呼吸や体温、血圧の調整がうまくいかなくなり、がんと戦う白血球にも悪影響が及んでしまいます。
がんを発症させないための3つのポイントは
毎日多忙な人や、精神的につらいと感じている人、睡眠不足な人は、免疫力が激減してがんになりやすいとされています。慢性的にストレスを感じている人は、交感神経が緊張状態にあるからです。また、ストレスは活性酸素を発生させる一因。活性酸素が増加すると、がん細胞が生まれやすくなり、がんを発症することがあります。交感神経の緊張を解くために、休息を十分にとることが大切です。リラックスすると働きだすのが副交感神経。副交感神経が働くと、血管が広がり、血液・リンパの流れがスムーズになります。血液・リンパの流れがスムーズになると、栄養・酸素が全身に送られ、体温が高くなり、老廃物や疲労物質をスムーズに排出。そうすることで、体の修復や疲労回復が行われ、健康な日々を過ごせます。
ストレスをできるだけ感じないように生活すること、感じてしまった時は解消する方法を考えておくとよいでしょう。気軽にできる趣味や運動で、ストレスを溜めない生活を心がけることが大切です。
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