咽頭(喉の奥)にできるがんを咽頭がんと呼びます。
原因として最も多いのは喫煙ですが、他にも飲酒・ウイルス・貧血などもその要因に。咽頭がんによる年間死亡者数は約2,000人。
それほど多くはありませんが、男性の患者は女性の患者のおよそ3倍にものぼります。
咽頭がんは上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がんの3種類に分類できます。上咽頭がんはEB(エプスタイン・バー)というウイルスが原因とされていますが、下咽頭がんの中でも輪状軟骨後部がんという種類については貧血が原因だと考えられており、要因は多岐にわたります。
40代以上の男性に多いとされる咽頭がんですが、この輪状軟骨後部がんに関しては、女性の患者が圧倒的多数を占めています。喫煙や飲酒は食道がんや口腔がんの危険因子でもあるため、咽頭がんと併発しているケースも少なくありません。
咽頭がんの転移の特徴は、ガンが初期の段階から周囲の組織に転移する症例が多く、その進行が速いこと。上咽頭がんの場合、周囲の組織だけでなく、肺・肝臓・骨などの離れた組織へも転移しやすくなります。
咽頭がんの症例では発症から早い段階で頸部のリンパ節へ転移するケースが多く確認されています。しかも、咽頭がんの切除手術をしても、ある程度時間が経ってから別の臓器への転移が確認されることも少なくありません。この場合、肺をはじめ、肝臓や骨などが転移先として目立ちます。
咽頭の周辺には多くのリンパ節が存在するため、上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がんのいずれの場合においても比較的早い段階から転移するケースが多くなります。最初に転移するのは咽頭周囲のリンパ節。特に頸部のリンパ節と考えるのが一般的です。咽頭がんの場合、通常は食べ物を飲み込むときの違和感や喋りづらさ、声がれなどの症状が初めに現れますが、リンパ節転移による首のしこりなどの症状が先に現れるケースも多く、この段階で初めて咽頭がんと診断される患者さんがおよそ60%にのぼると言われています。
咽頭がんからのリンパ節転移の場合、咽頭がんの中のどの種類に該当するか、または、どのステージ段階かによって治療法が異なります。
上咽頭がんの場合、リンパ節への転移が確認された時点でステージ2以上となります。しかしながら上咽頭がんに対してはいずれのステージでも基本的に外科手術は行われず、放射線療法と化学療法が中心となります。
中咽頭がんと下咽頭がんの場合、リンパ節転移が確認された時点でステージ3以上となります。ステージ3ではリンパ節をはじめとした周辺組織の切除手術を行うことがありますが、ステージ4に到達すると治療は難しくなってしまうため、緩和ケア療法や対症療法が行われます。
咽頭がんはいずれの種類でも遠隔転移が多く目立ちます。中でも上咽頭がんは低分化型扁平上皮がんが多く、中咽頭がんと下咽頭がんに比べて遠隔転移してしまうケースが特に多いことで知られています。肺・肝臓・骨などがその代表的な転移先ですが、中でも比較的近くに位置する肺は、最も多い転移先と言えるでしょう。
転移性の肺がんの特徴として上げられるのはなかなか症状が出ないということですが、安心はできません。1週間以上続くひどい咳や血痰などの症状が出始めた場合は注意が必要ですが、これらは転移性の肺がん特有の症状ではないため、診察を受けなければわからないのが現状です。
転移性の肺がんの場合、その原発となっているがんに適した治療法を行うのが好ましいとされています。咽頭がんが原発となっている肺がんの場合リンパ節郭清外科手術が行われるケースもありますが、特に上咽頭がんの場合は抗がん剤を用いた化学療法や放射線療法が行われます。放射線療法後に化学療法を行うことで治療成績が向上したという報告もされていますが、どのような組み合わせが最も効果的かなど、まだ不明な点が多いのも現状です。遠隔転移が発見されると治療が難しくなってしまうケースもあり、この場合は緩和ケアが行われます。
鼻の奥にある飲食物と空気が通る管を咽頭と呼び、その上部分を上咽頭と言います。そこにできるがんが、上咽頭がんです。リンパ節に転移したことが原因でできる首のしこりで発覚するケースが多くあります。首のしこり以外には鼻づまりや鼻血などが起こり、耳が聞こえづらかったり目が見えにくくなったりという症状も発生。この症状が出ている際は進行している証拠なので、おかしいと思ったらすぐに耳鼻咽喉科に相談する必要があります。
手術が難しい箇所に発生するがんのため、手術するケースはほとんどありません。切除しても再発する可能性が高く、放射線治療での対応が優先されるケースが多いようです。放射線治療の他には、薬物療法が用いられます。放射線治療と併用する化学放射線療法、その前後に行われる導入化学療法や追加化学療法で対応。導入化学療法は、再発の可能性がある患者を対象として行われます。
上あご奥から、舌の奥にある付け根部分までの範囲にできる中咽頭がん。リンパ節に転移しやすいのが特徴です。近くのリンパ節に転移した後に見つかることがあります。
初期症状としては以上の通りです。
いくつか当てはまったり長く続いたりする場合は早めに診断しておくべきです。
がんに対応するだけでなく、飲食や発声に関する機能を維持することを重視します。対応法は手術・放射線治療・化学放射線療など上咽頭がんと同じです。がんの進行度や機能を温存するかなどで対応方法を決定します。
進行が進んでいない場合、口から器具を入れる内視鏡治療で切除することが可能です。進行している場合は切除する範囲が大きくなり、手術ができなくなる可能性が高まります。首のリンパ節に転移しているケースが多く、その場合はリンパ節も切除。手術の後遺症として、発音や飲食する機能が低下します。
中咽頭の下にあり、喉頭蓋(呼吸時に開き、ものを飲み込む際に閉じる部位)から喉元までの管のことを指します。
下咽頭がんは、上咽頭がん・中咽頭がんと同様にリンパ節へ転移しやすいのが特徴です。声門である喉頭にも転移しやすく、がん発見時には喉頭まで広がっているケースもあります。
発症には飲酒や喫煙が関係しているとされており、予防法として喫煙回数や飲酒量を抑えることが大切とのことです。
患者の体力や希望をふまえて、治療方針を決定します。初期の場合は喉頭の温存する方向で、放射線治療や手術などで対応。進行している状態であれば、喉頭を摘出しなければいけません。喉頭を全部切除した場合は声を出せず、術後は首の付け根に管を通して呼吸することになります。食道の一部もしくは全てを切除する場合もありますが、腸か皮膚の一部を移植することで食事を摂ることもできるようです。その他には、顔のむくみや首にこわばりが発生する可能性があります。
上咽頭がんの初期に見られる症状です。
鼻水に血が混じっている場合も、咽頭がんの可能性があります。咽頭がんは鼻や耳などに症状が出るうえ、脳神経にも影響を及ぼすのが特徴です。その際には目が見えにくくなる、物が二重に見えるという症状が発生します。
咽頭がんの症状の1つとして、首にしこりが発生します。この症状が出ている時点で、がんがリンパ節に転移している可能性が高いため早めに診断してもらいましょう。首以外にも、口の奥やのどにできる場合があります。検査の際にはしこりの一部を採取して、顕微鏡でがん組織があるかを確認。他にも超音波検査やMRIによる検査が行われます。
口を大きく開けづらい、舌が動かしづらいという症状が起こることで、食事が困難な状態になります。飲み込んだ時に違和感を感じる、食事が通りにくいと感じる症状咽頭がんの症状の1つです。また、咽頭がんの他にも舌がんやALS(筋萎縮性側索硬化症)などを発症している可能性はないと言えません。
食事や普段の会話でのどや舌に長期間違和感を感じるようであれば、病院で一度検査を受ける必要があります。
上咽頭がんは、ウイルスの感染が関係しているとされています。そのため、若い方も発症するというケースがあるようです。少しでもは発症のリスクを抑えるためには、日頃からケアを行う必要があります。うがいや水分補給などに加え、歯磨きも毎日食後に行うのがベストです。
中咽頭がん・下咽頭がんの場合は、喫煙および飲酒が原因の1つと考えられています。禁煙および飲酒を控えることが、咽頭がん発生の予防につながるでしょう。ヘビースモーカーやお酒をよく飲む方は、年に1回耳鼻咽喉科で検査を受けることをおすすめします。
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