再発との違い

椅子と花がんの転移や再発という言葉は良く耳にしますが、実際にはどのような仕組みで起こることなのでしょう。

転移と再発との違いや、再発が起こる仕組みについて簡単に説明していきます。

がんの再発が起こるしくみとは

がんと診断されるとすぐに、腫瘍のある位置や大きさ、数などを各種の画像検査で確認し、切除手術を受けることになります。

開腹し、または内視鏡や腹腔鏡などで、目に見える範囲の腫瘍をすべて取り除く治療を行いますが、切除には限界があり、ごく小さなものは取り逃してしまうことがあります。

また、最初に腫瘍が発見された時、すでに目に見えない微小な転移が起こっている場合があり、それらを残さず切除することはとても難しいことです。

ですから、初回の外科手術で腫瘍を取り除いて完治したものと思っていても、残っていたがん細胞が再び増殖し始めることがあり、それを“再発”と言います。

目に見えない微小ながん細胞は手術で切除できないので、再発を防止するために外科治療と同時に抗がん剤による化学療法が行なわれます。薬によって、細かながん細胞まで死滅させてしまうわけです。

この方法は現在、ごく一般的な治療法となっていますが、このことは、がん治療における再発が決して珍しいことではない、という事実を物語っています。

再発と転移の違いとは

腫瘍が最初に発生した場所を“原発”と言いますが、原発した臓器や器官で切除されなかったがん細胞が残っていた場合、同じ場所で再び増殖することを再発と呼びます。

転移の場合は、発生する経緯がちょっと異なっていて、原発の場所から血流やリンパの流れに乗ってがん細胞が移動し、別の臓器や器官で増殖を繰り返します。

また、原発の臓器ががんの浸潤によって破裂したり、がん細胞が内臓の壁を突き破ったりした場合に、周辺の臓器や器官へ腫瘍がばらまかれてくっ付き、増殖してしまった場合も転移と言います。

転移も再発も、がん細胞自体は原発がんのものと同じ性質を持ち合わせています。厳密には、転移も再発の一種なのですが、便宜上区別しているわけです。

再発の種類

がんが再発すると、その成り立ちや部位ごとで局所再発・領域再発・遠隔(全身)再発と呼ばれます。その呼び方は以下の通りです。

  • 局所再発:原発がんと同じ部位もしくはごく近い場所にできた再発がん
  • 領域再発:腫瘍が原発がんの発生場所の近くにあるリンパ節または組織で成長したときに生じる再発がん
  • 遠隔(全身)再発:原発がんの発生場所より離れている器官または組織に転移し、再発を起こしたがん

同じ再発がんでも再発の種類が違うことで、治療法も異なります。がんの再発が見られたときに、医師によってはがんが「広がっている」「(再発がんのあらわれた部位に)飛んでいる」と表現する場合も。再発がんの広がりや状態などを調べるために検査を行うこともあります。[注1]

  • [注1]国立がん研究センター:再発、転移とは

再発を起こしやすい部位

他の組織や臓器に転移・浸潤しやすいがんがある一方で、再発しやすいがんもあります。その一つが肝細胞がんです。肝細胞がんの多くは、肝炎ウイルスによって生じる肝硬変や慢性肝炎が原因になります。そのため、最初のがんを治療しても高い確率で肝臓内の異なる場所に再発する可能性があるのです。このことから、治療後も継続的に肝臓の状態や再発がんの有無を確認することが必要です。他にも、食道がん・膵がん・直腸がんの一部・膀胱がんの一部が再発しやすいがんと言われています。

がんの種類によっては再発があるか早めに診断して治療する場合や、目に見えないほどのわずかな転移があるものと想定した上で再発の可能性を減らすための治療を始めることが有効である場合もあります。しかし、がんの再発や転移は完璧には防げません。検査や治療の進め方を検討する際は完治できない可能性も踏まえて、がんの状態とそれぞれの体の状態に沿った治療法が採用されます。[注2]

  • [注2]国立がん研究センター:がんの再発や転移のことを知る

20年経っても再発の可能性がある乳がん

乳がんは20年後の再発も考えておく必要がある

乳がんも再発の可能性が高いがんとされています。肺がんのような他のがんは、治療完了から5年、10年経って再発しなければ、ある程度はがんのことを忘れて生活できます。しかし、乳がんは治療が終わってから10年、20年が経っていても再発する可能性があるのです。再発部位は肺や骨、リンパ節の場合が多くあります。

乳がんの再発はがん幹細胞の再活性化によるもの

これほど時間が経っても乳がんが再発を引き起こすのは、がん幹細胞が関係していると考えられています。近年の研究によって乳腺の細胞や血液細胞といった特定の組織にしかならない組織幹細胞が、がん組織にもあることが判明しました。組織幹細胞は自己増殖だけでなく、違う性質を持つ「分化」もできます。このため、がん幹細胞は他の組織や体全体のことを考えることなく幹細胞の増殖をサポートする細胞を呼び寄せて操り、分化した細胞を増やせる環境を整えているのです。

がん幹細胞自体に増殖する力はあまりありませんが、分化した細胞は良く増えます。このがん組織に従来型の放射線治療を行うと、分化した細胞からさらに増えた細胞だけが死滅し、がん幹細胞は生き残る場合があるようです。がん治療を逃れた幹細胞は、冬眠します。乳がんは冬眠期間が長く、DNAに新たな傷ができたときに目覚めて再活性するのです。行動を起こしたがん幹細胞は再び支援細胞を呼び寄せて分化した細胞を増やし、がん組織をつくります。

支援細胞の役割を特定

この再発を止める方法としては、支援細胞の存在がカギになります。支援細胞がない状態だと、がん幹細胞は体に住みつけません。従来の放射線治療や抗がん薬治療では撃退しにくかったがん幹細胞の弱みが、支援細胞にあると分かってきたのです。がん幹細胞か支援細胞をターゲットにした治療ができれば、がんが再発する不安はなくなります。現在、その治療法を開発するための研究が、世界中で始められているところです。[注3]

大阪大学で行われている研究

大阪大学でもがん幹細胞に着目し、この細胞に効き目がありそうな新しい抗がん剤を発見したそうです。ただし、この抗がん剤は分化した細胞には効かなかったとのこと。そこで新たに考えられたのが、従来の抗がん剤と新しい抗がん剤の両方投与です。現在、この2種類の抗がん剤を使った治療ができないかという研究が進められています。

大阪大学では、がん細胞をより穏やかな細胞に作り替える「細胞リプログラミング」という研究も進められています。京都大学の山中伸弥教授のiPS細胞発見がきっかけだそうです。山中教授の行った方法をとり入れて遺伝子にがん細胞を入れてみたところ、大腸がん・肝臓がん・膵臓がんのどれも元の遺伝子異常が治ったわけではありませんが、ふるまい方は正常細胞に近づいていたとのこと。さらにマウスを使って実験すると、押さえつけられていたがん抑制遺伝子が活動していたことが分かりました。この発見をもとに、がん細胞にだけ届いて大人しくさせる治療法の開発が行われています。[注4]

  • [注4]大阪大学医学系研究科消化器外科学:がんを克服するための 新しい選択肢を 切り開く

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