がんの再発・転移予防に効果が期待される成分として、わさびに含まれるワサビスルフィニルが話題となっています。どのような特徴を持つ成分なのか、がんに効果をもたらす仕組みなどを解説しましょう。
わさびには、私たちが体内に持っている解毒酵素を、強力に活性化させる作用があると言われています。
日々、私たちが接しているカビや排気ガスなどの物質の中には、体に入るとがん細胞を発生させてしまう、発ガン性物質と呼ばれるものがあります。
しかし、有害物質が体内に入ってきた時に、肝臓にある酵素で解毒しているので、すべての人に重大ながん細胞が発生するわけではありません。老化やストレス、生活習慣の乱れなどの要素が重なると、解毒酵素の働きが弱まり、がん細胞が発生してしまいます。
解毒酵素の働きを上手く活性化させられるかどうかが、がん予防のカギを握っていると言っても過言ではありません。
わさびに含まれている6-MSITC(6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート)の量を、本わさびの品種5種とわさびの加工食品でどれくらい量が変わるのかを分析しました。
本わさび5品種の6-MSITCの量を葉、茎、根と部位別に測定。その結果、どの品種も根と茎に6-MSITCの含有量が高いことが分かりました。一方、西洋わさびの6-MSITCの含有量は本わさびに比べて低いことも分かったそうです。本わさびのなかで6-MSITCの含有量が最も高かった品種は「みつき」でした。最も含有量が低かった品種とみつきで6-MSITCの量の差を確認すると、およそ1.6倍の差に。みつきは収穫量も多く。優れた品種であることが分かりました。
わさびの加工食品は25製品を分析。するとメーカーと製品によって6-MSITCの量に大きな差があることが分かりました。6-MSITCの含有量の違いは、本わさびを原料に使っているか、本わさびのどこを使っているかが大きく関わっているということも明らかになっています。
これらの結果により、食事で効率よく6-MSITCを摂取するには、本わさびの根と茎を積極的に摂り入れるのが望ましいことを確認。加工されたわさび製品でも、原料に本わさびの根と茎が使用されているものを選ぶことが重要であることが分かりました。[注1]
肺に自然転移を起こすr/mHM-SFME-1細胞を用いて、わさび成分6-MITC(6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート)ががんの転移を抑制するかを検証。転移したかどうかの確認には、原発腫瘍以来のヒトc-Ha-ras 1遺伝子にPCR法を用いて行われました。
わさび成分の腎臓への転移がなかったかを確認。結果、ほかの薬剤で転移抑制を試みたグループに比べて、転移した遺伝子の検出が少なかったことが分かりました。これは原発の腫瘍から血流中への癌細胞の移動を抑えたからではないかといわれています。[注2]
体内で働く解毒酵素のひとつとして挙げられるのは、GST(グルタチオンSトランスフェラーゼ)というもので、この酵素を活性化させる働きが最も強い野菜が、わさびなのだとか。
ラットの肝細胞を使った実験では、あらゆる野菜の中でも、わさびがGSTを活性化させる効果の一番高い値を示したそうなのです。しかもこの活性化作用は、わさびを食べてから約24時間持続するという研究結果が出ています。
さらに、わさびは強力な抗菌作用を持つことが分かっています。わさびを食べることによって、胃がんや胃潰瘍の原因とされる、ピロリ菌の増殖を抑える効果があるとされ、わさびは胃がん予防にも一役かってくれます。
通常、ピロリ菌の除菌を行う際は抗生物質が使われますが、薬剤耐性が生じてしまう恐れも。薬の服用と同時に、わさびを摂取するのがお勧めです。
山口県山口市徳地で栽培されているわさびを四季ごとに生産者から直接購入し、部位ごとに細かく切る、またはすり下ろしたものを使用します。それに3倍容の95%エタノールを加え、温度を4℃に保った状態で3日間成分を抽出。抽出した液を遠心分離した後の上清をサンプルにしました。実験の対象となったのはラットの肝臓細胞です。わさびから抽出した液をラットの肝臓細胞に投与し、24時間後に細胞を収穫し、どのような変化が起きたのかを確認しました。
この実験結果により、わさびの根と茎には1年を通して細胞の活性が見られることを確認。四季によって違いが出ることはなかったそうです。わさびの葉は、3月に収穫されたわさびの抽出液で高い活性が見られました。
すりおろしたわさびの根と茎は、冷凍保存して2ヶ月ほどまでのわさびで高い活性を確認。根と茎をおろしてから冷凍した場合、わさび自体を冷凍してからおろした場合でも結果に大きな違いはありませんでした。
醤油漬け、みそ漬け、粕漬けとわさびが加工された状態でも、生のわさびと同様の活性を確認。生食でも加工食品でも、わさびががん予防に有効な食品であることが確認されました。
老化や生活習慣病の進行を早めてしまう活性酸素。ストレスや喫煙などが原因となって発生する、体内の“サビ”のようなものですが、この体の”サビ”をわさびの摂取によって抑制できることが分かっています。
同じく抗酸化作用が強いとされるビタミンCは、発生した活性酸素を消去することができても、発生前に抑制することができません。
その点、わさびには活性酸素が発生すること自体を抑える働きがあるので、体の細胞を酸化させることなく若々しく保つことができるのです。
さらに、わさびが刺身に添えられていることから考えても、生魚や貝類などに付着して食中毒や病気の原因となる細菌を殺菌する働きが強いことが分かります。
話題となった病原性大腸菌O-157や、アニサキスなどの寄生虫には効果テキメン。刺身や寿司を安全に味わうことができる背景には、わさびの働きが隠されていたのです。
非アルコール性脂肪肝炎の発症に関わっている酸化ストレス防御遺伝子群制御転写因子「Nrf2」に着目し、Nrf2のアクチベーターであるわさびの成分6-MITC(6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート)を投与するとどのような結果になるかを検証しました。検証は野生のマウスと、Nrf2が欠損しているマウスで反応を比較。結果、野生のマウスでは脂肪肝の改善が認められましたが、Nrf2が欠損しているマウスでは改善がみられませんでした。このことから、6-MITCはNrf2が関わっている脂肪肝の予防と治療に期待できる成分であることが明らかになったのです。[注6]
東京都立衛生研究所で、わさびが細菌の繁殖、または寄生虫をマヒさせる効果を検証する実験が行われました。[注7]
わさびは練りわさび、粉わさび、本わさびの3パターンを用意。さらにそれぞれを0.5g、1g、2gに分け、濃度0.4%の塩水に溶かしました。そのなかに寄生虫アニサキスを入れ、どのくらいの時間で活動力が弱まるかを観察したのです。この結果、わさびのパターンで若干の差はあったものの、すべてのわさびは15分ほどでアニサキスの動きを弱めることが分かりました。アニサキスの動きを弱めたのは、わさびに含まれるアリルからし油によるものと考えられています。
さらに酵母の発酵を抑制できるかどうかも検証され、結果として酵母の発行を抑制することが分かりました。これは大腸菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌といった菌の増殖抑制にもつながる結果です。これにより、生の魚をわさびとともに食することが衛生面でも効果的であることが分かりました。
食べられるようにするにはどうしたらいいのでしょうか?
すりわさびを食べた時に感じる「ツーン」とした辛さを抑えるためには、マヨネーズと混ぜてみるのもおすすめです。すりわさびに含まれるアリルからし油と呼ばれる成分は、揮発性が高いため鼻などの粘膜を刺激し、ツーンとした辛みを感じさせます。
マヨネーズの油分は鼻などの粘膜を保護する役割となり、ツーンとした辛みを感じにくくしてくれますよ。※個人差があります
わさびってどうして辛いのでしょうか?
わさびには、辛味のもとになる「シニグリン」と呼ばれる成分が含まれています。シニグリンの状態では、苦味を感じることはあっても辛味を感じることはありません。ただ、わさびをすりおろすと「アリルからし油」という辛み成分に変化するため、一般的なすりわさびを食べた際、人は辛いと感じるのです。
また、市販のチューブわさびは、本わさびよりも辛味の強い西洋わさびや香辛料の辛子も加わっているため、より辛味の感じる調合となっています。
わさびの皮を剥いてからすりおろすか、剥かずにそのまますりおろすか、いつも迷ってしまいます。どちらが良いのでしょうか?
わさびの皮に土などが付着しているため、包丁である程度こそぎ落としたり洗ったりしますが、皮をすべて剥くかどうかについて明確な決まりはありません。
すりわさびに皮を残したくないと感じるのであれば、包丁で皮を落とすのも良いでしょうし、気にならない方は皮を残したまますっても問題ありません。また、皮を残す・残さない場合で、食感などが変わるため比較しながら食べてみるのもおすすめです。
甘くはないのでそんなにカロリーがないと思うのですが、わさびのカロリーが知りたいです。
本わさび1本あたりのカロリーは、約70キロカロリーです。70キロカロリーに相当する他の食べ物としては、みかん2個、もも0.7個分などです。
わさびをそばや刺身などで使用する場合は、一般的に小さじ1杯分ですので実際は15キロカロリー前後の摂取となるでしょう。
わさび醤油以外の使い方が分かりません。アレンジの仕方を教えてください。
わさびを使ったお手軽な料理として代表的なジャンルとしては、和え物にわさびを加えたものです。
また、わさびを味わいたいけれど辛みを抑えたいという場合は、熱を加えるのがおすすめです。わさびの辛み成分は熱に弱いため、風味を残したまま辛みのみを抑えることもできます。
アレンジとしてパスタソースやスープに加えてみるのはいかがでしょうか。
ツーンと辛いわさびですが、食べ過ぎるのは控えたほうが良いのでしょうか?辛いのを食べ過ぎるのは良くないイメージがあります。
わさびを何本も食べると、下痢や腹痛・吐き気などをもよおす可能性があります。いくらわさびが好きでも、一度に大量に食べるのは控えましょう。
また、辛みの強いすりわさびを大量に食べるのも、吐き気や頭痛・腹痛などの可能性もあるため、食べ過ぎには注意が必要です。
よく本わさびや西洋わさびといった種類があると聞きますが、その違いは何ですか?
本わさびはアジア方面・西洋わさびは東欧が原産地です。また、辛みは西洋わさびの方が強い傾向で、本わさびは比較的やわらかさのある辛さと表現されています。
見た目にも違いがあります。本わさびが全体的に緑色で、西洋わさびは白色なため、一目で分かるでしょう。
わさびに含まれるワサビスルフィニルという成分には、血小板が凝集するのを抑えて、血栓をできにくくする効果があることが分かってきました。これは、血液を固まりやすくする酵素の活性を阻害する働きを持つためで、ドロドロの血液をサラサラにし、血流を促進してくれると言われています。
血流が良くなれば当然、冷え性の改善にもつながって来るはず。わさびを摂取することで、体が芯からポカポカ温まって体温が上がり、免疫力アップも期待できます。
また、最近の研究によると、わさびには、花粉症などのアレルギー症状を引き起こす酵素の働きを抑える効果があるのでは?とも指摘されています。
わさびにはイソチオシアネート類が含まれています。この成分が血小板の凝集に関わっているたんぱく質の働きを抑制。これによりわさびには、血栓ができるのを抑えるという効果があるといわれています。[注8][注9]
発がん抑制や血液サラサラ効果など、たくさんの健康効果をもたらしてくれるのが、わさび特有の成分「ワサビスルフィニル」です。
正式名称は『6-メチルスルフィニルヘキシルイソチイオシアネート』と言って、わさびに含まれている芥子油のひとつ。この成分は日本原産のわさび(別名:本わさび)に多く含まれているもので、例えばヨーロッパ原産の西洋わさび(ホースラディッシュ)には含まれていません。
ワサビスルフィニルの最大の特徴は、わさびをすりおろすことで初めて生まれ、健康効果を発揮すること。西洋わさびが主体のわさび製品や、副原料や食品添加物の多い常温チューブのわさびにはほとんど含まれていません。
この成分には、驚くべき健康効果がたくさんあると言われていて、発がん抑制や抗酸化作用などはその一部。以下に、ワサビスルフィニルが持つ働きをいくつかピックアップしてみましょう。
ワサビスルフィニルが、有害物質の解毒酵素を活性化させ、発がん抑制に効果を発揮することはすでに解説しました。
さらに一歩進んで、体内で発生してしまったがん細胞に対しても、増殖を抑制したり、転移を防ぐ作用を持っていることが分かってきたのです。
腫瘍細胞を使って、わさび抽出物の効果を研究した結果、人の胃がんからリンパ節へ転移した腫瘍細胞に対して、明らかな増殖抑制の作用が確認されたそうです。このときのわさび抽出物の成分を細かく分離して解析したところ、やはりがん抑制作用を持つ成分の正体は、ワサビスルフィニルであることが分かりました。
ワサビスルフィニルは人の白血球病細胞を自滅(アポトーシス)させることで、がんの増殖の抑制・転移の予防につながると言われています。さらに、人の白血球よりも、リンパ球系の白血病細胞に対してより効果が強く、がんの原因にはならない正常な細胞には影響しないということもわかってきました。
実際に行われた試験にワサビスルフィニルと、肺がん、胃がん、大腸がん、卵巣がん、脳腫瘍、乳がん、前立腺がん、メラゾーマなど人のがん細胞を用いた薬剤感受性試験があります。この試験の結果、特に乳がん細胞と皮膚がんのメラノーマ細胞に対して、強い抑制効果が確認されました。
また、化学合成したワサビスルフィニルでも効果が出ることがわかっています。皮膚発がん実験において、化学合成したワサビスルフィニルを塗布すると、子宮がんの原因であるヒトパピローマウイルスの発生が減少し、優位に抑制されました。また、マウスを用いた実験では、ワサビスルフィニルを4日間連続して与えることにより、肺腫瘍の数が優位に抑制されています。[注4]
植物などによる抗がん作用の研究は積極的に行われていますが、がんの転移に関する報告は多くはありません。
そこで、がん細胞の転移を想定してマウスの実験が行われました。マウスの足にがん細胞を植え付け、2週間後に肺に転移したがんの数を比較。餌に乾燥したワサビスルフィニルを投与したマウスは、対策をしていないマウスに比べて転移がん数が76%も少ないという結果に。[注3]
また、メラノーラの転移実験では、転移実験の2週間ほど前からワサビスルフィニルを投与したマウスに、コロニーの減少が顕著に認められたそうです。「2週間前からワサビスルフィニルを摂取する」という検証は、日常生活でワサビスルフィニルを食べることに相当します。これらの実験は、ワサビスルフィニルの転移抑制と、毎日の食事の重要性を物語る結果となりました。
ワサビスルフィニルの発がん抑制効果は、次の作用があるからと考えられます。
特に、ワサビスルフィニルにおいては、異物の無毒化・排泄を促す解毒酵素の誘導作用や、がん細胞の自滅(アポトーシス)誘導作用、細胞毒性が詳しく研究されています。
がんの転移は、がん細胞が原発巣から離れて血管に移動、血流にのって別の臓器などに運ばれ、接着・増殖することで起こります。ワサビスルフィニルの転移抑制作用は、原発巣から血液中へのがん細胞の移動を抑制しているからだと推測されているそうです。また、転移の抑制には免疫の関与が大きいことが予想されています。[注4]
このように、すでにできてしまったがん細胞に対しても、増殖を抑制し、転移を防ぐ効果まで確認されているワサビスルフィニル。がんの代替療法に活用できる切り札として、今後ますます注目を集めるであろう健康成分です。
※ワサビスルフィニルについて
わさびの老舗「金印わさび」が独自の特許製法でわさびから有効成分を抽出し、ワサビスルフィニルと命名、商標登録しています。
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