胃がん

胃日本では肺がんに次いで、2番目に患者数が多いと言われている胃がん。初期段階であれば転移が少なく、比較的簡単に取り除くことができますが、症状が分かりにくく早期発見しにくいとされる難しいがんです。中には知らず知らずのうちに胃壁の中へ広がってしまう、スキルス胃がんという恐ろしいタイプもあります。

ただし、近年、胃がんの罹患率は緩やかに減少し、死亡率は急激に減少しています[注1]。このことから、正しい知識を身につけることが大切です。ここでは、胃がんの基礎知識と転移しやすい臓器、治療法などについて解説します。

目次

胃がんの基礎知識と転移の特徴

胃がんは、早期発見できれば比較的簡単に取り除くことができ、再発もあまりありません。さらに、初期段階では、ほかのがんと比べて転移が少ないそうです。初期の胃がんは進行が遅く、がん細胞が小さな塊の状態で胃の粘膜に留まっていて、分裂や移動があまりないのだとか。

ただし、増殖が進むと筋肉にまで到達し、進行胃がんとなってしまいます。そうなると、胃を突き破って腹膜に転移したり、血流に乗って肝転移を起こしてしまうこともあります。

また、胃の粘膜には異変が見られないのに、胃壁の内部に病巣が広がるスキルス胃がんというタイプがあり、発見されにくいのが特徴。がんが見つかった時には、腹膜へ転移していたり、広範囲のリンパ節に転移が見られる場合が多く、とても危険な胃がんです。

胃がんから転移しやすい臓器とその症状

通常タイプの胃がんでもスキルス胃がんでも、転移しやすいのはリンパ節や腹膜です。ほかに、血行性の転移として肝臓や肺に転移することもあるそうです。

以下に胃がんの転移についてまとめてみました。

リンパ節転移

胃がんが遠くへ流れていく経路は2つあり、リンパ管と血管(静脈)です。リンパ管へ流れ込んだがん細胞は、胃の周りのリンパ節にとどまり、そこからがん細胞が増えていくとリンパ節転移となり、進行すると、さらに遠いリンパ節へ転移しています。

そのため、胃がんが進行すると、リンパ節にがん細胞が潜んでいる可能性が高くなるのです。手術では、胃がんを切除するだけではなく、潜んでいる疑いのある胃の周りのリンパ節を取りますが、このことをリンパ節郭清(かくせい)といいます。リンパ節郭清は胃がんの進行具合によって範囲を設定しますが、胃がんのできた場所によって異なります。

リンパ節を取るとお腹に一時的にリンパ液がたまったりしますが、新たなリンパの流れ道が形成されるので、生活への支障はありません。[注2]

肝転移など血行性転移

胃がんが進行して表面の粘膜から胃壁の中へ入ってしまうと、胃壁にある血管から血流に乗って他の場所で移動してしまう場合があります。

胃がんが血流に乗って転移する血行性転移として最も多いのは肝臓。腫瘍マーカーの値が高くなってCTなどの検査を受け、転移が見つかることが多いそうです。1センチ以上の大きさの転移であれは、ほとんどの腫瘍をCTで見つけることができます。

肝転移などの血流による転移が起きた場合、全身のほかの場所にも転移があることが考えられます。手術ですべてを取り除くことは難しくなるので、抗がん剤治療がメインとなります。[注3]

  • [注3]京都大学医学部消化管外科:胃がんの転移と診断

腹膜転移

胃の表面の粘膜に発生したがんが、胃壁を突き抜けてしまうほどに進行してしまったら、胃の周りの腹膜へ転移することがあります。

内臓を包んでいる腹膜のあちこちに、散らばるように転移してしまうので、ほとんどの場合、切除手術でがんを取り除くことができません。

そのため、原則として抗がん剤治療や緩和ケアが中心となります。腹膜転移している可能性がある場合、治療方針を決めるため腹腔鏡検査を受け、患部を観察し診断をします。[注3]

腹膜播種とは?

腹膜播種とは、腹膜の表面に腫瘍細胞がちらばり根付いた状態です。

腹膜播種を伴う悪性疾患の場合、抗がん剤治療や姑息的手術といった通常の治療法では生存率が非常に悪いことで知られています。欧米では一つの選択肢として、病変を切除する腹膜切除術と細胞が死滅する42-43度の抗がん剤を加えた生理用食塩水を用いての温熱化学療法が確立されています。

しかし、この手術法は日本だと限られた施設のみで行われているのが現状です。

胃がんから転移した場合の主な治療法

治療法は、胃がんの進行具合(通称:病期、またはステージ)によって異なります。胃がんが胃壁のどれくらいの深さまで転移しているか、どのリンパ節に転移しているのかを観察。胃のX線検査(上部消化管透視)、CT、超音波内視鏡、胃内視鏡検査などの検査を行い、胃がんの進行度を6段階(IA・IB・II・IIIA・IIIB・IV)に分けていきます。

IAが最も早期の胃がんで、IVが最も進行した胃がんです。IA、IB期のステージでは、胃がんの転移が早期だと高い確率で治ります。[注5]また、胃がんが進行して腸が詰まる「腸閉塞」が起こった場合は、食べ物を食べやすくするためバイパスなどをつくる「姑息的手術」を行うこともあります。

そのほかの治療では、内視鏡などを使って治療を行ったり、胃の入り口側を切り取る「幽門側胃切除術」や出口側を切り取る「噴門側胃切除術」あるいは胃全部を切除する「胃全摘術」、胃の周りにあるリンパ節の一部を取り除く縮小手術での治療が可能です。[注6]

がんの種類や進行具合によって治療法は異なり、腫瘍が確実に取り除ける状態であれば積極的に切除する外科療法で治療します。しかし、腫瘍が取り除けない場合は、抗がん剤による化学療法や放射線療法も併用して行う必要があります。

血行性転移や腹膜転移は、最も重度のIV期にあたります。様々な臓器へ広く転移した状態なので、治すことが難しいとされています。血行性転移は外科療法の適応にならず、化学療法をメインとした治療になります。また、腹膜転移では、化学療法や胃全摘術などの方法で治療していきます。[注7]

がんの再発や転移とたたかうには

がんに立ち向かう上で、もっとも注意したい「再発や転移」。たとえ、医師による適切な処置を受けていたとしても再発・転移の可能性はある、ということをわきまえておかなければなりません。

そのため、医療機関のみに頼るのではなく、私たちができる代替医療も率先しておこない「がんの予防線」を何重にも張り巡らせることが、がんとたたかっていく上で極めて重要となってきます。

漢方や鍼灸、アロマ・マッサージ、健康食品、サプリなど、さまざまな代替医療が存在する中で、「グルタチオンS-トランスフェラーゼ」をいかに活発化させるかが、がん再発・転移予防のキーポイントとされています。

グルタチオンS-トランスフェラーゼとは、体内で働く解毒酵素のひとつ。この酵素を活性化させる野菜として、わさびが注目を浴びています。

わさびに含まれる成分「ワサビスルフィニル(6-メチルスルフィニルヘキシルイソチイオシアネート)」は、このグルタチオンS-トランスフェラーゼを活性化させるとして、論文でも発表されました。

このほかにも、ワサビスルフィニルには、活性酸素を抑える、ピロリ菌などの細菌の増殖を抑制、血流の促進や血栓予防、免疫力向上、といったさまざな効果も。

また、がん細胞の増殖を抑制し、転移を防ぐといった効果も確認されているため、がんの再発・転移とたたかう方はもちろん、すでに転移してしまったという方にも、ぜひ摂取して欲しい成分なのです。

胃がんのABC検診

ABC検診というものについて聞いたことはあるでしょうか。これは胃がんのリスク分類をする検診のこと。ABC検診を実践することにより胃がんの早期発見につなげることができます。予防医療としてできるだけ早期発見を目指している方も多いはず。そういった時にチェックしておきたいABC検診についてご紹介します。

胃の検査といえばバリウムを飲む方法が一般的ではありましたが、ABC検診では胃カメラもバリウムも必要なく、ほんの少量の採血を行うことにより手軽に検診が可能です。そこまで簡単な検査方法ならば精度も低いのでは…と思うかもしれませんが、ABC検診による早期がんの発見率はバリウムを用いて行う検診の2倍とまでいわれています。

バリウムを飲んだ後の感覚がどうしても苦手…という方もABC検診をチェックしてみましょう。

ABC検診とは、血液検査によってピロリ菌の感染と、胃粘膜の萎縮がどれくらい起きているのかを反映するペプシノーゲンを測定する検診のことで、この検診により胃がんの発生リスクを分類して評価ができます。ピロリ菌といえば胃の粘膜に住み着いている菌のことを言うのですが、胃の炎症を引き起こす厄介なもので胃がんの発生とも深く関わっているのです。

ピロリ菌が発生していると胃粘膜は様々なダメージを受けてしまい、病気の原因になります。

これらの検査を行い、ABC検診では4つのタイプに分類されます。

  • A群…ピロリ菌 陰性/ペプシノーゲン 陰性
  • B群…ピロリ菌 陽性/ペプシノーゲン 陰性
  • C群…ピロリ菌 陽性/ペプシノーゲン 陽性
  • D群…ピロリ菌 陰性/ペプシノーゲン 陽性

胃がんの発生危険度はA群が最も低く、D群に近づくほど高まります。 もしこの検査結果でA群以外の結果が出た場合は二次精密検査を行うことになります。内視鏡を用いて精密な検査を行い、ピロリ菌の除去などの治療を行うことになるのです。

現段階ではまだ胃がんではなかったとしてもリスクが高い場合にはその後も定期的な内視鏡検査が推奨されます。

ABC検診の注意点

ABC検診は胃がんの早期発見に繋がる検診ということもあり実践する方が増えていますが、胃がん自体を診断するための検診とは違います。あくまで「胃がんリスクを評価する検診」であることはしっかりと押さえておきましょう。

ただ、この検診を受けることにより将来的に胃がんになりやすい体質なのか?ということについて判断できるので、この検診を受けてリスクが高いと判断された場合には検診の回数を増やしたり、定期的に精密検査を受けるなどして早期発見のための対策が取れるでしょう。[注8]

参考:『ご存じですか?「胃がんリスク検診」( ABC 検診)』一般財団法人 日本健康増進財団 理事長 三木 一正
http://www.e-kenkou21.or.jp/wp/wp-content/uploads/2014/09/abc08251.pdf

胃がんの発見と胃カメラ

できるだけ簡易な検査で胃がんを発見したいと思った場合、胃カメラでわかれば理想的なのに…と思ったことがある方もいるでしょう。胃カメラは体にとって負担が少ない検査方法であるだけでなく、直接体の内部の状態が確認できるため高い精度が魅力です。

胃カメラで発見できる体内のトラブルはたくさんあるのですが、胃がんも発見可能です。実際に早期の胃がんを胃カメラで発見し、そのまま内視鏡で治療できたようなケースも多々あるため、胃がんの早期発見に胃カメラが非常に有効だといえるでしょう。

胃カメラの段階で早期発見ができれば体にとって負担の少ない治療法についても選択可能です。口からカメラを入れることもあり、えづいてしまうのでは…と心配になる方もいるかもしれませんが、高齢になるほどカメラの挿入による、えずく症状が弱くなるため、高齢者でも胃カメラの負担は少ないといえるでしょう。

胃カメラで体内の様子を直接確認できれば、胃がん以外に発生しているトラブルの早期発見にも繋がるため、気になることがあれば早期に検査を受けてみましょう。

胃がんの「転移・再発」関連ニュース記事

胃がんから他臓器への転移についての研究が進み、メカニズムが解明されてきています。最近の胃がんの転移に関連するニュースを紹介します。

遺伝子を改変する技術「ゲノム編集」でがんの転移を抑制

胃がんが肝臓へ転移するメカニズムを研究している名古屋大学では、転移の際に働くたんぱく質を特定しました。遺伝子を効率よく改変する「ゲノム編集」という技術を使い、たんぱく質「シナプトタグミン7」を取り除くと、転移や増殖が抑えられたことから、治療薬の開発につながると期待されます。マウスを使った実験で5匹中2匹は転移が見られず、がんができた3匹もがん細胞が通常のマウスに比べ100分の1でした。このことから、大腸がんや乳がんなど転移しやすい他のがんにも同じ手法が使えるか検討しています。(日本経済新聞/2018年6月2日)[注9][注10]

胃から腹膜に転移したがんの治療に効果的な物質を開発

量子科学技術研究開発機構が、胃がんから腹膜に転移したがんの治療に効果的な物質を開発したことを発表しました。アルファ線を出す物質「アスタチン211」と胃がん細胞の表面にあるたんぱく質にくっつく抗体「トラスツズマブ」を組み合わせた物質です。マウスの実験では肝臓や腎臓への悪影響はなく、がんは小さくなるか消失しました。研究者の長谷川氏は「5~10年後を見据え開発を進めたい」と話しています。(朝日新聞デジタル/2017年6月29日)[注11]

  • [注11]朝日新聞デジタル:腹膜転移の胃がん、狙い撃ち 「攻撃役」新物質合成

研究結果が得られたのはマウスのみで、ヒトへの効果についてはこれからです。実用化されるまでには長い年月がかかるでしょうが、さらに研究が進めば新たな治療法も開発されるでしょう。

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